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所長メッセージ:
本研究所教員の日本学術会議会員任命をめぐる問題について

公益財団法人日独文化研究所 所長 大橋良介

報道によりますと、日本学術会議の第25期・第26期会員候補者として推薦されていた六人の研究者が、任命権者である内閣総理大臣により任命されないという、異例の事態となりました。この六人の中には、京都大学文学研究科の芦名定道教授(キリスト教学)も含まれています。

本研究所は、この事態と無関係の位置に置かれているものではありません。名誉顧問の山極壽一教授は、学術会議の前会長です。また芦名教授は山極教授と共に、本研究所の共同研究「共生」成果刊行版、『共同研究 共生―そのエトス、パトス、ロゴス』の執筆者の一人であり、本研究所が主催する「公開シンポジウム」や「哲学講座」の講師をも担当して、受講生から厚い信頼を得てきました。同教授が日本学術会議の会員に推薦されたことは、学術的観点からきわめて妥当であり、喜ばしいことです。それだけに、総理大臣および国会での政府側説明で、芦名教授の任命拒否の理由がいっさい明らかにされないということに、強い懸念を抱きます。この懸念は、日本の学術行政のあり方にも向けられます。

第二次世界大戦後の歴史を日本と並行するかたちで辿ったドイツを参考事例とするなら、学術会議にそのまま呼応する組織はドイツにはありませんが、或る連合体があります。その中心は任期6年24人の会員から成る「学術評議会」(Wissenschaftsrat)で、規模は小さいですが、そこでの「学術委員会(Wissenschaftskommission)が、Deutsche Forschungsgemeinschaft (DFG), Max-Planck-Gesellschaft (MPG), Hochschulrektorenkonferenz (HRK), Helmholtz-Gemeinschaft Deutsche Forschungszentren (HGF), Fraunhofer-Gesellschaft (FhG) 、などとの連携で、文教政策・科学政策に関する提言を、州政府・中央政府に提出します。この学術委員会は「行政委員会」(Verwaltungskommission)と共に評議会での二本柱をなしますが、人事に関して相互に独立し、政府からの干渉といった事例は聞きません。ドイツにおける人文学の重厚な伝統と批判精神は、このような体制のもとで発展してきたので、日本でも参考にすべき点が多々あります。

以上から、日本学術会議で本年10月2日に出された要望書に賛同し、芦名教授が学術会議会員に任命されることを強く望むものです。

2020年10月10日

公益財団法人 日独文化研究所所長
大 橋 良 介