本研究名誉顧問・千玄室大宗匠のご逝去を悼む
長らく本研究所の名誉顧問として私どもの活動を見守ってくださった裏千家大宗匠、第15代千玄室様が、8月14日ご逝去されました。享年102歳であられました。このご命日が、太平洋戦争終戦記念日の前日だったことは全くの偶然でありましょう。ただ、大宗匠がご自分の生を終える日としてこの日を選ばれたかのような思いも、禁じ得ません。大宗匠は1943年12月に、特攻隊への召命を含意する学徒出陣となられ、その直前、お父上の第14代千玄室様から、利休が切腹した時に用いた宝剣を見せられました。名工・粟田口吉光の作で、約25センチの刀身です。利休は自害の折に、「提ル我得具足の/一太刀今此時ぞ/天に抛つ」と詠みましたが、大宗匠ご自身におけるご臨終の「今此時」は、裏千家茶道に脈々と伝わる一期一会の「今此時」でもあったと、思われます。
大宗匠が戦後に華麗な国際的ご活躍をなさり、ドイツ連邦共和国を含めた60数カ国歴訪し、日本文化の粋としての「茶の湯」を通して国際交流に努められたことは、周知の通りです。日本とドイツの学術的文化交流を旨とする本研究所にとり、大宗匠が示してこられた大きな足跡はまことに鑑とすべく、大宗匠に研究所の名誉顧問を長年にわたって務めていただいた所以でもあります。大宗匠のご永眠に心からの哀悼の意を表し、本研究所の課題遂行に今後を期する思いを、いっそう新たにする次第です。
2025年8月 公益財団法人 日独文化研究所 役員一同